生涯描きたい想いを淡くにじむ色の世界で
Casieアートコンテストは、アートのサブスクCasieが主催するアートの公募コンテストです。
Casieを通じて、より多くの方にアート作品をご覧いただく機会を提供できれば、と開催する運びとなりました。
今回は第3回、テーマ「夏を感じるアート」のグランプリ受賞者、柴田 久美さんのインタビューをお送りします。


──はじめに、グランプリ受賞作品《泡沫ーutakataー》について、教えてください。


普段は、垂らしや滲みのような「偶然」8割、「描きこみ」2割で描いているのですが、今回描いた泡沫の泡は一粒一粒に責任を持ちたかったので、地道に筆で点を打ちました。おかげで、腱鞘炎になりかけました(笑)。

「泡」と「抽象」は相性が良かったので、以前からよく描いていましたが、その抽象に「魚」という具象を入れ込む事は、初のチャレンジ。結果うまくいったので、良かったと思っています。


《泡沫ーutakataー》 柴田 久美


実は別のタイトルだった《泡沫ーutakataー》


── 柴田さんの作品は、ブルーなど寒色系の色をメインにしたものが多いですが、これらに理由はありますか?


具体的な理由はないのですが、大学時代からブルーの絵を描くことが多かったです。他の色はポイント使いなら良いのですが、メインにすると胃がもたれやすいというか。ブルー系の色なら、なぜかしっくり塗れるんです。

......あ、よく考えたら車もブルーだ。単純にブルーが好きなのかもしれないですね(笑)。


── 普段どんなものをモチーフに描くことが多いですか?


今は「雨」の風景を描くことが多いです。雨って、すごく面白いんですよね。空が雲で覆われ、雨粒が落ちて、沢山の者(物)に触れながら、また天に昇って帰っていく。その循環がまるで「輪廻転生」のようなんです。そんなさまざまな表情を見せてくれる大気成分たちに、もしも色や形があるならば......と想像しながら描いています。


── 作品タイトルは、旦那さんが付けてくれることも多いと伺いました。


そうなんです。というのも、私自身タイトルを付けるのがすごく苦手で......。実は、今回グランプリをいただいた作品も、主人が付けてくれたんです。私が最初に付けたタイトルを伝えたら「そんなのじゃグランプリ取れないよ」って言われまして(笑)。


── ちなみに、どんなタイトルだったんですか?


《おさかな天国》です。


──それは(笑)。確かに《泡沫ーutakataー》の方がいいですね。


ですよね(笑)。他にも主人が付けてくれたタイトルは結構あって、たとえば《水無月》もそうですね。私が《カエルの歌》というタイトルにしようとしていたら、主人がアイデアをくれたんです。そうやって、近くでジャッジしたり、補ってくれる人がいるのはすごくありがたいですね。


《水無月》柴田 久美


自分は「描きたい病患者」だから


── 柴田さんが絵を描くのを好きだと自覚したのはいつでしたか?


幼い頃から勉強も運動もできない、粘土も工作もできない、唯一得意と言えるのが、絵を描くことでした。というのもあり、幼い頃から、よく父親が美術館へ連れて行ってくれたんです。なので、中高生のときは、周りがみんなディズニーランドやカラオケに行こうと言う中で、私は「ごめん、展覧会が明日までだから......」と美術館へ行ったりしていました。だいぶ変わった子ですよね(笑)。それ以来、他に好きなことができるわけでもなく、本当に「絵」だけに没頭してきました。


《戯れ》柴田 久美


── そこまで一筋に没頭できたのはなぜだったんでしょうか?


なぜだったんでしょう......。私にとって絵は、何かのためにというよりも「なきゃ生きていけない」という方が近いのかも知れません。


── 「絵を描くことで自分を保っている?


そうですね。ずっと泳いでいないと死んじゃうマグロみたいな感じで、絵を描いていないと死んじゃう(笑)。

いわゆる「描きたい病患者」なんです。


「私は画家です」と胸を張れるまで


── そんな「描きたい病患者」であるがゆえに、苦労したことも多かったそうですね。


そうですね。美大卒業後は、WEBデザイナーとして働いていましたが、やっぱりアナログで描きたい想いは捨てきれませんでした。現在は結婚して子供がいるので、子育てや家事の合間に制作をしていますが、コンクールや公募展も落選続き。日の目をみない絵を描く日々に「私は画家です」なんて、口が裂けても言えませんでした。


《雨とセッション》柴田 久美


そんなとき、CasieさんをTV番組で知って。コンクールに出品できないような小さい絵も載せてくれる、お任せでプロデュースしてくれる、そんなうまい話があるわけないと思いながらもエントリーしてみたんです。

それから、少しずつレンタルのお知らせが届き、販売が成立したり、憧れだったカフェに展示して頂いたり、カレンダーにしてもらったり、スタッフさんが作品を推してくれたり。本来自分でアクションを起こさないと実現しない事を、Casieさんが肩代わりしてくれるので、本当に助かりました。

そして今回のコンテストでは、念願のグランプリ受賞。やっと「私は画家です」と、胸を張って言えるような気がしています。今後は、オーダーでの作品制作にもチャレンジしてみたいなと思っているので、ぜひご依頼いただければ嬉しいです!


プロフィール:柴田 久美(しばた くみ)
東京都出身、茨城県在住のアーティスト。多摩美術大学造形表現学部造形表現学科油科専攻卒業。元々は油彩を専攻していたが、結婚、出産を機に水彩へ転向。現在は水彩、油彩、鉛筆画など幅広い技法で作品を制作中。Casieアートコンテスト vol.3グランプリ受賞。
Instagram:https://www.instagram.com/kumi_s0609/
作品一覧:https://casie.jp/artists/1158