どこか切なく、それが愛おしい。感情を揺さぶるアート

あの絵を描く、あの人は、どんな人生を送って、どんなことを考えながら生きてきた?

Casieに所属する人気アーティストにインタビューするこの企画。


第1弾は、江川 真嗣。島根県出身、神奈川県在住の絵画アーティスト。ほのかに切なく“ノスタルジック”な作品は、老若男女問わずファンが多い。

そんな江川さんのルーツに迫ると、学生時代の葛藤や、恩師との出会いなど、彼の作品に繋がるエピソードを聞くことができました。


江川 真嗣(えがわさとし)

島根県出身、神奈川県在住。高校卒業後、進路を迷う中で母親がすすめてくれた武蔵野美術大学 通信過程へ進学。卒業後は鹿児島県での暮らしを経て、神奈川県へ。個展やグループ展、フライヤー作成などをメインに活躍し、どこか切なく愛のある作品が人気のアーティスト。

Instagram:https://www.instagram.com/egawa_satoshi/




「描きたい」を抑えていた学生時代


ーー島根県の自然豊かな町で生まれ育った江川さん。幼少時代はどんな子供でしたか?


江川 真嗣(以下、江川) :幼い頃は、あまり絵を描いていた記憶がなくて。1人でブロック遊びをしたり、近所に住む友達と山や海で遊ぶことが多い子供でしたね。周りには、海や川、山があって、常に自然に囲まれていました。



↑幼少期の江川さん(右)


ーー意識的に絵を描き始めたのはいつ頃だったんですか?


江川 :本格的に描き始めたのは、美大の通信制に通い始めてからかもしれません。元々、絵を描いたり、何かを作ることは好きだったんですけど、それを何故かかっこ悪いと思っていて(笑)。……というのも、中高生の頃って、「絵を描いている子=大人しくて目立たない子」というイメージが何となくあるじゃないですか。だからか、自分の中で「絵を描きたい気持ち」を抑制していたんです(笑)。


ーーなるほど(笑)。実は描きたい気持ちがあったのに。


江川 :そうそう。本当は、美術部や写真部に憧れていたんですけど、周りの目を気にしてテニス部に入ったりして。スケッチ会とか美術の授業でも、内心めちゃくちゃ楽しいのに、張り切っている姿を友達に見られたくなくて、家に持ち帰って課題の絵を描いたりしていましたね(笑)。


ーー可愛いですね!(笑)


江川 :今思うとそうですよね(笑)。当時、周りを気にせず表現できていたらどんなに良かっただろう……なんて考えたりもしますけど。


↑「しまうま」江川 真嗣


ーー抑制していた「絵を描きたい気持ち」は、その後どう変わっていったんですか?


江川 :大人になるにつれて、周りの目も気にならなくなって、「抑えなくてもいいんだ」って思えるようになっていきました。母が美大への進学を勧めてくれたことも、大きなきっかけになったと思います。


ーーお母さんには「絵が好き」ということを話していたんですか?


江川 :いえ、1回も話したことはなかったんです。なのに、なぜか勧めてくれて、僕自身もかなりびっくりしましたね。もしかしたら、僕が家に美術の課題を持ち帰って一生懸命やっていたことや、『情熱大陸』で、写真家やダンサーの回を好んで観ていたのを、知っていたのかもしれないですね(笑)。




恩師は、ビールを飲みながら絵を描くおばあちゃんだった


ーー美大は通信制に通っていたそうですが、在学中も地元・島根に住んでいたんですか?


江川 :1年目は島根にいました。美大に進学したとはいえ、通信制ということもあり、ほとんど学校には行かないので、最初は何の画材を買っていいのかすら分からなくて、すごく困りましたね(笑)。同級生の友達もなかなかできないし……。


↑「ことづけ」江川 真嗣


ーーたしかにそうですよね!


江川 :田舎ということもあり、周りにも頼れる人がいなかったので、とりあえず地元・島根の「カルチャーセンター」に相談しに行きました(笑)。そこで「恩師」と呼べる存在に出会ったんです。


ーー「恩師」は、どんな方だったんですか?


江川 :ビールを飲みながら絵を描くような、カッコイイおばあちゃんでした。基礎となることは、その方が全部教えてくれたような気がします。家に呼んで絵の描き方を教えてくれたり、自分が描いたり絵に対しても、僕に意見を聞いてくれたり。今でも個展のお知らせをしたら電報をくれるような、すごくあたたかい方ですね。


↑「wedding」江川 真嗣


ーーめちゃくちゃいい話ですね。


江川 :すごく感謝していますね。今はなかなか会えないですが、いつかちゃんと恩返しをできたらいいなと思っています。


ーー2年目は島根を出て、神奈川へ?


江川 :いえ、神奈川へ来る前に、1年間だけ姉が住んでいる鹿児島県に住んでいました。鹿児島では、交友関係に恵まれて、たくさん知り合いができましたね。その中でも、当時出会った役者の友達は、ほぼ同時期に上京もして、今も親友です。お互いに、形は違うけれど、同じ表現者として、色々なことを話せる大切な存在ですね。




いつも思い浮かべるのは地元・島根の景色


↑「無題15」江川 真嗣


ーーどこかノスタルジックな雰囲気のある江川さんの作品は、Casieでも幅広い世代から愛されています。作品を制作する上で、特に意識していることはありますか?


江川 :意識的にそうしている訳ではないのですが、絵を描く時に思い浮かべるのは、どうしても地元の海や山、川だったりします。だからそういう雰囲気を感じてもらえているのかもしれないですね。

「東京」という街にはすごく刺激を受けているのですが、いつも僕の中にあるのは、地元「島根」の景色なのかもしれないです。




Best Art Spot

江川さんがアートを感じるスポット


生田緑地 / 神奈川県川崎市


引用: https://rurubu.jp/andmore/spot/80013485


家の近所なので、毎日のように行っているお気に入りスポット・生田緑地(いくたりょくち)。平日だと人もそんなに多くなく、自然豊かなので、気分転換にはぴったりです。四季折々の植物が見られるのはもちろん、敷地内には岡本太郎美術館や日本民家園のような見所もあって、夏には蛍を見ることもできます。特に、春〜夏の期間は、写真のメタセコイアの植えられた道が美しいので、ぜひ行ってみて欲しいです。


所在地:神奈川県川崎市多摩区枡形7丁目1-4

https://www.ikutaryokuti.jp/




My Rule

江川さんが絵を描く上でのルール


「作品に合わせた、音楽選び」


普段、制作をする時は音楽を聴きながら描くことが多いです。「今日はこういう色彩の絵だから、こういう曲をかけよう」というように、より深く「絵の世界」に入るために、絵に合わせて音楽を選ぶことも。なので、時には、いつも聴かないような珍しい音楽をかけたりすることもあります。