ファンタジーを織り込んだヨーロピアンな記憶

あの絵を描く、あの人は、どんな人生を送って、どんなことを考えながら生きてきた?

Casieに所属する人気アーティストにインタビューするこの企画。

第31弾は、雨星 立夏(あまほしりっか)。旅先で出会った記憶を元に描くヨーロピアンでファンタジーな作品は、雨星さんの「可愛い」や「美しい」を詰め込んだコレクション。

1つにとらわれることなく、絵画、小説、写真など、幅広い表現方法で自由に。その中で叶えたい夢とは?


雨星 立夏(あまほしりっか)
神奈川県出身、神奈川県在住のアーティスト / 文芸家。絵画以外にも小説の執筆活動など幅広い分野で活躍中。
Twitter:https://twitter.com/amahoshi_rikka
Instagram:https://www.instagram.com/rikka_rainstar/


「美しい」「可愛い」を、絵の中に閉じ込めて


ーー雨星さんの作品には、ヨーロッパの風景や可愛らしい動物が多く登場しますが、どんなテーマで作品を描くことが多いですか?


天星 立夏(以下、天星)元々、美しいものや可愛いものが大好きなので、これまでに見た可愛いもの・美しいものを描くことが多いです。特に旅先で出会った風景や動物などは、自分のものにすることができないものなので、絵に描いて残しておくことは多いですね。


↑チューリップ / 雨星 立夏


↑リンゴの木 / 雨星 立夏


ーーコレクション的な感覚にも近そうですね。


天星 そうですね。たとえば「チューリップ」という作品は、デンマークの友人宅にあったロイヤルコペンハーゲンの花瓶を描いたものだったり、「リンゴの木」という作品は友人宅のお庭にある木だったり。ときには、自分の中でストーリーを考えながら描くこともあります。


ーーたとえば、どんなストーリーですか?


天星 「カボチャとウサギとジニア」には、“市場で買ってきたカボチャがウサギになって、そのウサギが走り回っている”という、ちょっぴりファンタジーなストーリーがあります(笑)。そういう風に、一見分からないとようなストーリーをこっそり考えるのが楽しかったりするんですよね。


↑カボチャとウサギとジニア / 雨星 立夏


漫画と小説と絵画と


ーー雨星さんが絵を描くようになったきっかけは?


天星 きっかけは「漫画」でした。母親が持っていた「キャンディ キャンディ」や「ジョージィ!」を読んだのがはじまりで、小学校へあがる前には漫画を描くようになって、それから中学生までは「漫画家になりたい」と思っていました。


ーー当時は、どんな漫画を描いていたんですか?


天星 魔物退治にいくようなファンタジー系少女漫画を描いていましたね。親友がとても絵の上手い子だったので、密かにライバル視していたのを覚えています(笑)。


ーーそこから絵画へ転向したのにはどんな経緯が?


天星 いちばん最初のきっかけは、小学校高学年の時に行った「ギュスターヴモロー展」だったと思います。当時は漫画家を目指していたのですが、そこで観た絵があまりにも美しくて「こういう絵を、いつか私も描いてみたい」と思ったんです。

本格的に絵画を描き始めたのは高校生の時で、中学の卒業制作で壁いっぱいにみんなで壁画を描いたことが転機になりました。でもいざ高校で美術部に入ると、3年間で3枚しか油絵を描かなかったんですけど(笑)。というのも、当時小説にどっぷりハマっていて。高校時代って、なぜか本たくさん読みません?


↑雪の朝 / 雨星 立夏


ーー私は全然読まなかったです……(笑)。


天星 あれ、私だけなのかな(笑)。小さい頃から小説を書いたり読んだりするのは好きだったのですが、高校時代は特にたくさん読んでいて。1日に2、3冊は読んでいましたね。

特に好きだったのは、長野まゆみさんの作品。現実的なストーリーの中にファンタジーもあって、すごく日本語が上手な方なんです。あとは、夏目漱石や太宰治のような日本文学もよく読んでいましたね。


↑海辺の街 / 雨星 立夏


ーー現在も、絵画と並行して小説も書いている?


天星 はい、メインは絵画なんですけど、出版社からデビューすることを目標に小説も書いています。普段は大手出版社の文芸部でお仕事をさせてもらっていて、仕事が休みの日や仕事が終わった後に自分の制作をしているのですが、やりたいことが多いあまり、全然時間が足りなくて(笑)。


ーー雨星さんが、今後チャレンジしてみたいことは?


天星 絵も小説も大好きなので、どちらもずっと続けていきたいです。どちらかに絞ろうとしたこともあったのですが、どうしても絞りきれず……。そのときに「私には両方ないとだめだな」って確信したんです。


いつかは、大好きな「絵」と「文章」ふたつを組み合わせて、大人も子供も楽しめるような「絵本」を作るのが夢です。



Best Art Spot

天星さんがアートを感じるスポット


ビールム(Virum) / デンマーク



ヨーロッパの旅では、色々な場所へ行きましたが、その中でもビールムは、とても印象的でした。フーア湖という大きな湖の近くにある街で、デンマーク・コペンハーゲンから電車で30分くらい北上したところにある別荘地です。

街の中には綺麗な川が流れていて、そこを人が小さな小舟で渡ったりするんですよ。図書館の脇を小舟が通っていくとか。それがすごく美しかったのを覚えています。



My Rule

天星さんが絵を描く上でのルール


「うまく描こうとしないこと」


私の絵は、現実にあるものを描くことが多いので、写実的に描こうとしないように気をつけています。なので、あえて写真を観ながら描くのをやめたり、絵ならではの自由な色や形を表現できるようにしています。