あの絵を描く、あの人は、どんな人生を送って、どんなことを考えながら生きてきた?
Casieに所属する人気アーティストにインタビューするこの企画。
第12弾は、NAO(なお)。千葉県生まれ、千葉県在住の絵画アーティスト。「動物」や「花」をメインモチーフとした、ポジティブでエネルギッシュな作品は、どれも親しみやすく、日常を明るく彩ってくれるものばかり。
自身の肩書きを「あなたの想いを繋ぐアーティスト」とし、アートを生み出し続けるNAOさんの過去と現在に迫ります。
NAO(なお)
千葉県出身・千葉県在住。武蔵野美術大学 テキスタイル専攻 工芸工業デザイン学科卒業。学園祭中に、先生から「絵を描いてみたら?」と言われたことをきっかけに絵を描くようになる。動物や花をモチーフにしたポジティブで親しみやすい作品が人気のアーティスト。
web site:https://www.behance.net/nao_works
Instagram:https://www.instagram.com/nao_photos/
エネルギッシュな魅力は、過去の経験があってこそ
ーーNAOさんが、本格的に絵を描くようになったのは、美術大学に通っている時に先生に勧められたことがきっかけだったそうですね。
NAO :はい、私は美大の中でもテキスタイル専攻だったのですが、学園祭で自主制作のイラストを展示していた時に「もっと絵を描いてみたら良いよ」と、他学科の先生に言ってもらったことがきっかけとなっていますね。
ーーそれ以前も、絵を描くこと自体は好きだったんですか?
NAO :あまり覚えてないのですが、幼い頃のビデオテープを観てみると、たんすや襖、家中に落書きをしているのが、映っていたので、好きだったのかなぁ(笑)。外で遊ぶのも好きでしたが、その反面、ひとり時間も好きな子でした。両親が共働きだったのもあって、いわゆる“鍵っ子”だったんです。寂しいなと思う反面「1人の世界に入れて嬉しい」という感覚もありましたね。
ーーその時間があったからこそ、自分の世界が創り上げられた、ということもあったり?
NAO :それはあると思いますね。1人で過ごす時間が多かったからこそ、自分の世界を構築するとか、自分の考えを持つとか、そういうことを自然と身につけられたような気がします。
dreamy sunflower lion
ーー美術大学へ進学するまでの学生時代で、印象に残っていることはありますか?
NAO :んー……(苦笑)。実は、とても暗黒な学生時代だったんですよね(笑)。
ーーえ、意外です……! 暗黒とは?
NAO :幼い頃は、天真爛漫で明るい子だったんですけど、小学校の最初の頃からいじめが増えましたね。クラスの中で絵で目立つことが要因になって、それを良く思わない子がいたり。とても人見知りだったので人とコミュニケーションを取ることも、上手ではありませんでした。両親が共働きだったこともあって、なかなか家族ともコミュニケーションが上手くいかなくて、孤独を感じることも多かったように思います。
with you
ーー今のNAOさんからは想像できないですよね。美術大学へ進学をしてからは、その苦しさは薄れていったんですか?
NAO :薄れたと思いますね。環境がとても良かったので。基本的にみんな「芸術」が好きで、受験するために色々な苦悩を乗り越えてきた人達ばかりなので、共通認識もたくさんあって、友人関係も自然と上手くいったかなぁと。でも、美大に入ったら入ったで、今度は将来に関する悩みが出てきましたけど(笑)。
ーー常に何かに悩み続けているじゃないですか(笑)。
NAO :そうなんです(笑)。今思うと、当時は真面目すぎたし、悩みすぎでしたね。でもその分、今は当時よりも楽に生きれるようになったなぁと思います。今の私が「明るい」とか「活発」とか「エネルギーがある」というイメージなのも、そういう色々な過去をクリアしてきたからなのかもしれないですね。「闇」があるから「光」もある、というか(笑)。
アーティストは、ある意味「起業家」
ーー2年前(2018年)に独立したNAOさんですが、美大卒業後はどんな進路に進んだのですか?
NAO :就活をしてはいたものの、決まらないまま卒業をしてしまったので、そのあとは、色々な仕事を転々としながら、フリーのお仕事をちょこちょこしていました。絵画教室の講師、壁画制作、インテリア事務所、制作会社、水泳のインストラクター、レストランでキッチンのお仕事、ブライダルフラワー……。1ヶ月のうちに辞めてしまったものもあります(笑)。色々やりすぎて分からなくなるくらい(笑)。
TV番組にCasieと共に出演してくれたNAOさん。このほかラジオなど様々なメディアに出演してくださっています。
ーーどの仕事もあまり続かなかったのには、どんな理由があったんですか?
NAO :んー、普通のお仕事だと、決まり事が多いですよね。それが私には合わなかった。例えばお給料もそうだし、働く場所、時間。でも、自分で仕事をすれば、そのどれもが交渉をできる。作品を作り出すように、0ベースで考えて構築することができるとか。例えば、対価にはお金以外の選択肢もあって、物々交換や労働交換の取引の提案をすることもあります。そういう柔軟な働き方の方が、私に合っていると感じます。
ーーでは、独立してからは、理想の働き方に近づいた感じですか?
NAO :そうですね。まだまだ道の途中ですけど、「自分が望む生き方ってこういう感じなのかな?」ということは、徐々に見えてきたような気がします。昔は、人と関わることも苦手だったけれど、今は仲間もできて応援してくれる人もいて。本当に、人に“いかされている”と思うんです。いかされるっていうのは「生きる」でもあれば、「活きる」でもあって。自分の才能を使ってもらっている、役立てて貰えることに、喜びを感じますし、とても感謝しています。
咲き誇る
ーー絵を描くだけでなく、全てを自分でやらなきゃいけないので、大変なことも多いですよね。
NAO :そうですね。「ハイレベルな技術があれば誰かが見つけてくれる」とか「〇〇に所属すれば安定する」という考えもあるかと思うのですが、現実はそうではなくて。アーティストって、ある意味「起業家」だと思うんです。少なくとも、私はそういう考えを持って表現をしていますね。
ーーなんだかそんな気はしていました(笑)。
NAO :あはは(笑)。画力を「感動レベル」にしておくことは、プロとして生きるのなら、この時代ではきっともう当たり前になっていて。その先が勝負なんだろうなと、私は思います。
ーーたしかに上手い絵と、欲しい・飾りたい絵っていうのは、また違う感覚ですよね。
NAO :それで言うと、私の作品ってお客様の反応から見ても「受け入れてもらいやすい絵」なのかなと感じますね。アートが好きでなかったり、興味がなかったとしても。なので自分の作品は、「はじめの一歩」のようなポジションなのかなと。
dreamy horse
ーーなるほど。それは、意図的にそうしているんですか?
NAO :元々「動物」や「花」が好きで描いていたので、全く意図的ではないのです。活動していく中で、段々と自分のポジションを理解していきましたね。
ーーそういえば、NAOさんの作品って、絵画作品にありがちな「よく分からない」とか「怖い」とか、そう言う要素が全くないですもんね。作品に込められた想いもポジティブなものが多いですし。
NAO :そうですね。Casieさんのお客様はインテリアとしてアートを楽しむ方が多いし、安らぎを求めているのではないかと思います。アートを初めて手にする人も多いんですよね? そんな方にとっても、私の作品は手に取ってもらいやすいんじゃないかなって思っているんです。
あなたの想いを繋ぐアーティスト
ーー今NAOさんが、アーティストとして活動する中で、1番ハッピーな瞬間はいつですか?
NAO :自分のアイデアや作品が、人に喜んでもらえたのをダイレクトに感じた瞬間や、私とお客様の想いが叶った時ですね! 最近で言うと、海浜幕張にあるコワーキングスペース「TENT幕張」さんに、作品を設置できたことが、嬉しかったことの1つです。
海浜幕張のコワーキングスペースに展示されているNAOさんの作品
ーーそれって、どんな経緯で飾らせてもらったんですか?
NAO :元々、私もコワーキングスペースの利用者の1人だったのですが、スペースを見渡すと空いている何も飾っていない大きな壁がたくさんあったんですよ。それを見た時に「ここに自分が描いた絵を飾らせてもらえないかな」と思って、ダメ元でオーナーさんに提案したのが始まりですね。自分も利用している場所なので、絵を観てくれた人の感想がダイレクトに聞こえるのも嬉しいですし、コワーキングスペースというビジネスの場所からアートとのコラボも生まれていて、そういう作品キッカケからの人と人との繋がりが、今はとてもありがたいですね。
ーーまさに、先ほどNAOさんが言っていた「活(生)かされている」という言葉の通りですね。
NAO :そうですね。私の持っている能力は、クリエイティブな部分だと思うんです。それに対して、意見や感想を頂けたり、話しかけて貰えることが、とても嬉しいですね。私だけではできないようなことも、皆で力を合わせてできることがあったりと、私自身も刺激になっています。
私の肩書きは「あなたの想いを繋ぐアーティスト」。これからも、人々の想いを「アート」で繋ぐ、実現させる。そんな役割を果たせていけたらいいな、そんな風に思っています。
Best Art Spot
NAOさんがアートを感じるスポット
パナソニック汐留美術館 / 東京都・港区
引用:https://panasonic.co.jp/ls/museum/
好きなギャラリーや美術館はたくさんありますが、その中でも「パナソニック汐留美術館」は特に好きです。Panasonicのビルの4Fにあるのですが、人の暮らしに密接した伝統工芸や海外の可愛い食器・テキスタイルなども展示されています。「生活にいかされる芸術」が好きなので、暮らしを想像しながら観るのが楽しいです。ミュージアムを観てから、下のショールームを一周、美味しいものを食べて帰る、というのが、私なりの楽しみ方です(笑)。
【スポット情報】
https://panasonic.co.jp/ls/museum/
所在地:東京都港区東新橋1-5-1 パナソニック東京汐留ビル4階
My Rule
NAOさんが絵を描く上でのルール
「絵を描く日は、1日中家にこもること」
絵を描くと決めた日は、一歩も外に出ないようにしています。どうしても外で仕事をした後や、出かけた後は、集中力が落ちているので。しっかり集中力を保てるように、絵を描く日と決めたら、その日は絵を描くためだけに時間を使うようにしています。