繊細な光と色が滲んで溶け出す「物語」みたいなアート。

あの絵を描く、あの人は、どんな人生を送って、どんなことを考えながら生きてきた?

Casieに所属する人気アーティストにインタビューするこの企画。

第25弾は、もぱ。長野県出身、京都府在住のアーティスト。光が滲んで溶け出すような、繊細かつおだやかな雰囲気を纏う、もぱさんの作品。

そんな作風からは想像もつかないが、「青づくめのファッションをしていた」なんていう過去もあるという彼女。作品の根底には、もぱさんが思い描く理想や、歩んできた人生から得たヒントや経験が詰まっているようだ。


もぱ
長野県出身、京都府在住のアーティスト。京都造形芸術大学美術科彫刻コース卒業。大学進学を機に京都へ移住し、現在も京都を拠点にする。結婚を機に、立体作品から絵画作品へ本格的にシフトし、現在は平面絵画を中心に制作中。
Instagram:https://www.instagram.com/mopanomegane/


立体作品から、絵画作品へ


ーーもぱさんは、元々京都造形芸術大学で「彫刻」を学ばれていたそうですね!


もぱ :はい、舞台美術やインスタレーションのような「空間造形」に興味があって、彫刻コースに進学しました。


↑「simoon」もぱ


ーーそこから、絵画に転向されたのはどんな理由からだったんですか?


もぱ :卒業後も立体作品を制作していたのですが、立体作品だと、つくる場所もそうですが、それを置いておく場所を確保することすらも大変で、制作活動を続けていくことが困難だったんですよね。


ーー確かに、自宅保管だとかなり大変ですよね。


もぱ :だんだんと「切り絵」のような紙を使った造形に移行していって。思い切って、平面をやってみようと、結婚を機に油画を始めて「絵画」に転向したんです。


全身「青色」だった時代


ーー美大進学前からものづくりが好きだったとのことですが、それ以外で、特にハマっていたことはありますか?


もぱ :実は、20歳くらいの時、「青色」にすごくハマって、全身青づくめだったんです(笑)。


ーー青づくめ! それはどんな「青色」だったんですか?


もぱ :細かい色味にまでこだわると、生活全般を青にできないので、とにかく青だったら何でもいいって感じで、青い物を探していました(笑)。髪の毛も「青色」でしたし。


↑「花の下でねむればよかった」もぱ


ーーそれはなかなかパンチが効いてそうですね!


もぱ :ですよね。今だと綺麗に青く染められると思うんですけど、当時はそんなに技術がなかったので、自分で染めたり美容院に行ったり、かなり試行錯誤していました(笑)。


ーーそもそも、もぱさんが「青色」に惹かれた理由って何だったんですか?


もぱ 赤って、外向きの色というイメージですよね。それに対して「青」は内面に向き合う色というイメージがあって、その部分に惹かれたのかも。「人間離れしたい」と言って、白い髪にする今の若い人と、感覚が近いのかなと最近思います。「人間を脱ぎ去ったあとに残る精神に興味あり」というか。脱げませんでしたが(笑)。


ーー20歳くらいの時から、いつ頃まで青ブームが続いたんですか?


もぱ :それが、1年とか1年半ぐらいで、ふと気が済んで髪は黒に戻しました(笑)。でも今も「青」という色は、根底に深く突き刺さっているので、作品を描く時にも、青や緑をよく使います。


↑「ゲーテ詩集より」もぱ


ーーそう言われてみると、もぱさんの作品には「青」や「緑」が多く使われていますね。


もぱ :はい。青ブームが落ち着いた後は、色彩講座に通って、じっくりと、一から勉強をして「青の中で、私はどの青が好きなんだろう?」という探求をしていたんです。結果「緑寄りの青」が好きだと、自分の中で腑に落ちて納得しました。


ーーもぱさんが作品づくりをする上で「色」はかなり重要なキーワードになっていそうですよね。


もぱ そうですね。色を分解するというか、「色の持つ意味」とか「自分を刺激する色の理由」を読み解いていく作業はよくしています。


ーーというのは?


もぱ :例えば、落ち葉の赤い部分と黄色い部分があったら、それと自分の気持ちを照らし合わせていく。色を選ぶ作業は、対象と自分の間を行ったり来たりしながら深く掘り進むような感じで進めています。観察して描くときは、いつもそうです。


ーー普段の制作は、何かモチーフとなるものがあることが多いんですか?


もぱ :ある時も、ない時もあります。「オリーブの枝」とタイトルをつけていても、オリーブの枝がモチーフにではなかったりもして(笑)


↑「オリーブの枝」もぱ


ーーえ、そうなんですか!


もぱ 何を描いているか、自分でもよく分からないんです。子供をモチーフにした作品に関しては、子供から始まるのですが、あとは色のことだけ考えているうちに出来上がってくるので、タイトルも後付けです。その中に物語が見えてくると良いんだけどなぁと、ぼんやり想いながら描いています。


観てもらうならば「明るい作品」がいい


ーーもぱさんの、アーティストとしての夢があれば教えてください。


もぱ :今は自宅で制作をしているので、あちこちに「アトリエ」を借りて制作したいです。Casieさんで、もっとたくさんの作品をレンタルしてもらえるようになったら、夢を叶えたいなと思っています。


ーーアトリエ、いいですね!


もぱ :あとは、病院やカウンセリングルームのような場所に作品を飾ってもらうことも、夢の1つです。


↑作品の展示風景(撮影:もぱ)


ーーそれは何か理由があったりするんですか?


もぱ :高校生の頃、入院した友人のお見舞いによく行っていたんです。その病院がものすごく暗い雰囲気で、もっと明るい雰囲気だったらいいのにって、痛切に思ったんですよね。その時の記憶がすごく鮮明で、病院やカウンセリングルームなどを、自分の絵の力で明るくできたら嬉しいな、って思います。


ーーもぱさんの作品は、全体的に「光」を感じる明るい印象の作品が多いですよね。今のお話を聞いて、そういった思いも、作品の色づかいや雰囲気に反映されているのかなと感じました。


もぱ :そうですね。もちろん、暗い色が思い浮かぶ時もあるのですが、誰かに観てもらうなら、あえて暗いものを描かなくても、明るい作品を描きたいなって。なので、これからも、明るい作品を描いていくんだと思います。



Best Art Spot

もぱさんがアートを感じるスポット


京都国立博物館の「考える人」 / 京都府



京都国立博物館・園庭にある、ロダンの彫刻作品「考える人」が、とても好きです。考える人が真西を向いているので、春分、秋分の時期に行くと、ちょうど夕日に向かって考え込んでいて、すごく綺麗です。逆に、西門から正面に向かって対すると、大きな空間をあの1つの彫刻が支配している様子が見られて、圧巻です。

作品自体はすごく有名なのに、ここにあることを知らない人も、意外と多いんですよね(笑)。興味のある方は、この場所になぜ「考える人」が展示されたのか、その経緯も調べてみると、もっと楽しく鑑賞できるので、おすすめです。



My Rule

もぱさんが絵を描く上でのルール


「ポストカードサイズのドローイング」



毎日ではないのですが、ポストカードサイズの絵を描くことは、ゆるいルーティンかもしれないです。常に2、3作品を並行して描いているキャンバス作品と、また違った感覚で描いています。



時々インスタグラムにも載せているのですが、今は行方のないまま、溜まっていくばかり(笑)。いつかは販売とかもしようかなと思っているところです。