ちょっと想像してみたくなるほどよい距離感のモチーフ

あの絵を描く、あの人は、どんな人生を送って、どんなことを考えながら生きてきた?

Casieに所属する人気アーティストにインタビューするこの企画。

第27弾は、marie(まりえ)。抽象的な中に、ちょっとだけ想像してみたくなる「立体的なモチーフ」や「余白」を取り入れた作品は、いつも観る人を惹きつける。

そんな彼女のルーツを探ってみると、プロダクトデザインを学んでいた美大生時代、影響を受けた無印良品の思想、人物などmarieさんを構成するキーワードをたくさん知ることができました。


marie(まりえ)
東京都出身、神奈川県在住のアーティスト。多摩美術大学 生産デザイン学科卒業。グラフィックデザイナーとして働きながらアーティスト活動を行う。
Twitter:https://twitter.com/fIXfqq6hBGRaYWK
Instagram:https://www.instagram.com/marie_illustration.jp/


観る人が想像できる「余白」を纏って


ーーmarieさんが作品を描く上でのテーマは?


marie :「いやし」と「空気感」を意識しながら、観る人が少し想像をできるような「余白」を纏った作品を描きたいと思っています。


↑object 1 / marie


ーー単に抽象的なだけでなく、想像力を掻き立ててくれるようなモチーフが描かれている作品が多いですよね。


marie :あまりに具体的なものは描かないようにしているのですが、抽象的すぎても引っ掛かりが無さすぎるというか。ただ丸が並んでいるだけでは何か分からないけれど、その下に器のようなものがあれば想像ができると思うんですよね。そういう“きっかけ”は、どこかに描きたいなと思っています。


ーー最初におっしゃっていた「余白を纏う」というのは、具体的にどんなことですか?


marie :「余白を残す」という考え方については、美大時代にプロダクトデザインを学んでいたことや、「無印良品」の考え方に影響を受けています。無印良品って、すごくシンプルなパッケージで商品展開をしているじゃないですか。あれは、商品として「こうやって使うものです」ということを定義しすぎず、使う人が工夫しながら自分の生活にカスタマイズする余白を残す商品企画をしているんですよね。そういう思想に共感して、自分の作品も誰かにとってそういう存在でありたいと思っています。


↑abstract 6 / marie


ーー作品の中には、平面上でも「立体」を感じさせる作品が多くありますが、それは当時プロダクトデザインを勉強していたことが影響している?


marie :隈研吾さん、吉岡徳仁さん、宮崎駿さんの3人ですね。自然からインスピレーションを受けた表現がすごく好きで、よくその3人の本を読んだりしていました。作品に、水彩画風の描写を入れることが多いのですが、それは吉岡徳仁さんや宮崎駿さんの思想に影響を受けたものだと思います。


絵を描くことも、ミュージカルも「表現」


ーーmarieさんが絵を描くようになったきっかけは?


marie :物心ついたときには、常に絵を描いた画用紙が積み上がっているような感じでした(笑)。もちろん友達と遊ぶのも好きだったのですが、ひとりで児童館へ行って、絵を描いたり工作をしたりするのも好きで。学校でも「絵がうまい子」というポジションが自分の存在意義みたいになっていって、よりたくさん絵を描くようになったような気がします。


↑abstract 1 / marie


ーーそれからずっと絵を描くことは続けている?


marie :中学・高校時代は、部活で演劇や音楽、ミュージカルをやっていました。元々、ディズニーの映画がすごく大好きで。中でも2Dのアニメ作品でミュージカル調のもの(「リトル・マーメイド」「美女と野獣」「アラジン」など)には、すごく影響を受けていて、多分そこからミュージカルが好きになったような気がします。絵を描くことと演技、方法は違うけれど、一貫して「表現をする」ということにはずっと興味があるように思いますね。


ーーそこから美大へ進学し、デザインを勉強するのにはどんな経緯があったんですか?


marie :役者もいいなぁと思っていたのですが、親から「お願いだから就職はしてくれ」と言われて(笑)。そんな時に「デザイナー」という職種を見つけたんです。振り返ると絵を描いて誰かに喜んでもらうことが好きだったし、「お金をもらいながら、絵を描くことができるなら最高!」と思って、美術大学のデザイン科に進むことにしました(笑)。


↑abstract 3 / marie


ーー(笑)。画家になろうという考えはなかった?


marie :なかったですね。というのも「こういう表現をしたい」という気持ちが、当時はあまりなかったんです。どちらかというと「こういう素敵なものが欲しいな」という需要に対して、より良いものを描いて喜んでもらう方が好きだったので。


ーーデザイナーは天職だったんですね。


marie :そうだと思っていたんですけど、結果的に仕事とは別で自分の作品を描いているので、少し物足りない部分もあったのかも(笑)。両方あることでバランスを取れるような気がします。


自分と誰か、両方のために


ーー現在、デザイナーのお仕事と並行して作品を制作するmarieさんですが、普段どんな時間に制作をしていますか?


marie :基本は仕事が終わった後や休日ですね。コロナ禍になる前は出社していたので、なかなか体力的にも精神的にもきつい部分があったのですが、今は在宅勤務になったので、かなり作品を描く余裕ができました。


↑個展の風景


ーーmarieさんが、今も昔も絵を描き続ける理由とは?


marie :「自分のため」と「誰かのため」が、半分半分な気がします。自己表現をしたいという気持ちがあっても、それは100%ではなくて。美大に進学するときに、絵画ではなくデザインを選んだこともそうなのですが、自己完結するのではなく、描いた先に「誰かと関わるきっかけ」や「誰かにとっての癒し」があると思いながら描いているんだと思うんです。


ーーさいごに、今後挑戦してみたいことや目標があれば教えてください。


marie :デザイナーとしてではなく、自分の描いた絵でお仕事をもらえるようになりたいです。たとえば、雑誌の背景や挿絵なんかにしていただいたり、パッケージに使ってもらったり。そういうお仕事ができたらすごく嬉しいですね。



Best Art Spot

marieさんがアートを感じるスポット


ビーナスライン / 長野県


↑landscape 1 / marie


幼い頃に連れて行ってもらった、長野県の「ビーナスライン」。だだっ広くて、人があまりいない、自然の風景と人工物が入り混じっているような景色。「landscape」シリーズなんかは、まさにこの景色に影響を受けて描いた作品です。



My Rule

marieさんが絵を描く上でのルール


「描く前に、ひとりの時間を作る」


絵を描く前には、ひとりで過ごす時間を作るようにしています。散歩をしたり、早起きして家の中で過ごしたり。自分の感性を思い切り広げながら「こういう雰囲気で表現しようかな」とというのを考えます。