あの絵を描く、あの人は、どんな人生を送って、どんなことを考えながら生きてきた?
第26弾は、HOHOEMI。埼玉県出身、埼玉県在住のアーティスト。レトロポップな世界観と、デジタルながらに味のある風合いが魅力の作品は、アパレルや飲食とのコラボなどグッズとしての人気も高い。
そんなHOHOEMI さんのルーツである「シルクスクリーン」との出会いや、幼い頃集めていた「もの」について語ってもらいました。
HOHOEMI(ホホエミ)
埼玉県出身、埼玉県在住のアーティスト。武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科在籍(2021年現在)。紙媒 体、アパレル、飲食などとのコラボのほか、表参道ROCKET、神田アジギャラリーでの展示、グッズ販売など、 幅広く活躍する注目のアーティスト。
Twitter:https://twitter.com/hohoemichan25
Instagram:https://www.instagram.com/hohoemichan25/
シルクスクリーンの表現で生まれる「アナログ感」
ーーHOHOEMIさんの作品に共通する「レトロポップ」な世界観には、どのようなテーマがありますか?
HOHOEMI :「昔ながらの可愛さ」と「現代ならではの可愛さ」をテーマに、その両方を感じられるような作品を、シルクスクリーンの表現で制作しています。
↑「band-aid tiger」HOHOEMI
ーーデジタル作品を“シルクスクリーンの表現で制作する”というのは、具体的にどのような方法なのでしょうか?
HOHOEMI :「シルクスクリーン」は、孔版画の技法の1つで、主にTシャツやバッグなどで用いられるアナログな印刷方法なのですが、色の上に色を重ねて印刷していくため、重ねた色同士が混ざって新しい色ができていくのが1つの特徴です。私の場合は、その工程と同様の流れをデジタルで行なっています。
ーーなるほど。だからこそ、レトロ感のある色合いや風合いに仕上がっているんですね。現在の表現方法で制作し始めたのは、いつ頃からですか?
HOHOEMI ::そうですね。普通に絵を描けば、自分の好きな色を思い通りに使うことができると思うのですが、シルクスクリーンの表現で絵を描く場合、実際に重ねてみるまで色が分からないので、思った色と違ったりすることもあります。でも、その反面で、常に発見があったり、新しい「可愛さ」を見つけたりすることもできるので、私にとっては、実験をしているような感じですごく楽しいんです。
吹奏楽に明け暮れた中高生時代
ーーHOHOEMIさんが絵を描き始めたのは、いつ頃からですか?
HOHOEMI :覚えている限りでは、幼稚園の頃からです。スケッチブックとペンでお絵描きしては、友達によく見せていました(笑)。当時は、とにかく可愛いものが大好きだったので、お姫様やイルカをよく描いていましたね。当時から将来の夢は「イラストレーター」でした。
↑「お花イヌ」HOHOEMI
ーー当時の夢が今叶っているということですね。その後、美大に進学するまでも、ずっと絵を描き続けていたんですか?
HOHOEMI :そうですね。ただ中高生時代は、部活に時間を費やしていたので、ほとんど絵を描いていませんでした。
ーー何の部活をやっていたんですか?
HOHOEMI :吹奏楽部で、チューバという大きな金管楽器を吹いていました。中学1年生から始めて、高校も部活で選んで。それくらい、部活に集中していましたね。
ーーそうなると、一見、音楽の道へ進むことも考えそうですが、その選択肢もありましたか?
HOHOEMI :もちろん音楽も好きだったのですが、不思議と進路は美術大学以外は考えられなかったです。しばらく絵を描いていなかったにも関わらず、幼い時に決めた「イラストレーター」という夢はずっと変わっていなかったんですよね。
雑貨屋で見たレトロな小物がルーツ
ーーHOHOEMIさんにとって、現在の作品の「ルーツ」になったものは?
HOHOEMI :昔から、高円寺や下北沢に遊びに行って、雑貨屋さんなどで小物を眺めたりするのがすごく好きで、当時から「レトロなもの」に惹かれる傾向がありました。特に、幼い頃に集めていた「SWIMMER」というブランドの雑貨は、私のルーツになっていると思います。
↑SWIMMERのグッズ(HOHOEMIさん所有)
ーーSWIMMER、すごく納得です! 作品のモチーフを選ぶときに意識していることはありますか?
HOHOEMI :散歩中やお店で見つけた可愛いもの、身の回りで気になったものは、必ず写真に撮って残すようにしています。常にモチーフにできそうなものは探していて、それを後から、作品に落とし込むことが多いですね。
↑ラドリオ(神保町) / HOHOEMIさん撮影
ーー普段の制作も、レトロな喫茶店で行うことが多いとか。
HOHOEMI :そうですね。コロナ禍になってからは、なかなか行けなくなってしまったのですが、元々は、予備校時代から通っていた神保町の「ラドリオ」「さぼうる」のような喫茶店で制作をすることも多かったです。やっぱりレトロな空間が、私にとってはすごく落ち着くんですよね。
どんな仕事も「プラス」になる
ーー現役の美大生 兼 イラストレーターとして活躍するHOHOEMIさん。普段どのようなお仕事の依頼が多いですか?
HOHOEMI :本や雑誌などの紙媒体、最近ではアプリやイベントのビジュアルなどもありました。あとは、飲食関係、アパレルのお仕事も多いです。
↑ステッカー(HOHOEMIさん撮影)
ーーすでに幅広い分野でお仕事をされていますが、今後やってみたいお仕事はありますか?
HOHOEMI :色々な方や業界とコラボレーションしていきたいです。私のイラストを好きだと思ってくださる方とコラボをして、色々な人に見てもらえれば嬉しいですね。なので、基本的には、どんなお仕事も断らないようにしています。
ーーそうなんですね! 世界観がしっかりあるので、イメージの合わないお仕事はしないようにしているのかななんて思っていました。
HOHOEMI :そこは、自分の世界観は保ちつつ、柔軟に対応するようにしています。今の作風になるきっかけだったシルクスクリーンもそうなのですが、新しいことにチャレンジすると、発見があったり、自分にとってプラスになることが多いので。
↑「band-aid peacock」HOHOEMI
HOHOEMI :自分1人で制作していると、どうしても表現や色づかいが限定されてきてしまうけれど、「もっとこうして欲しいです」という意見をもらうことで「こうやってみても可愛くなるんだ!」と学ぶことができたりするんですよね。そうやって今後も、常に「技術向上」をしていきたいなと思っています。
Best Art Spot
HOHOEMIさんがアートを感じるスポット
ハチマクラ / 東京・高円寺
↑ハチマクラ(HOHOEMIさん撮影)
↑ハチマクラ購入品(HOHOEMIさん撮影)
高円寺にある「ハチマクラ」というお店が大好きです。古いマッチや薬の袋など、一見ゴミになってしまいそうな、昔の紙モノ・古紙・古道具などを扱っているお店で、レトロ雑貨好きの私にはたまらない空間です。
・ハチマクラ
東京都杉並区高円寺南3丁目59-4
My Rule
HOHOEMIさんが絵を描く上でのルール
「椅子には座らない」
椅子に座ると集中できないので、ヨガマットを敷いて、ミニテーブルの上で制作しています(笑)。
床に直接座るとお尻が痛くなってしまうのでヨガマットは必須。あとは、必ず近くに白湯を置くこともマイルールです。常に飲み物を摂取していたいんですけど、太りたくないので白湯に。絵を描く時間は、体を動かさないことも増えてしまうので、足を伸ばしたり白湯を飲んだりして、なんとかバランスを保っています(笑)。