Spring has come.

私の母校多摩美術大学のグラフィックデザイン科には、大学三年次に写真コースという履修科目がありました。
私はそのコースを取っていたのですが、教科書で見た幻想的な写真技法「フォトグラム」という作品に魅了され、学内にある暗室にこもり、来る日も来る日も取り憑かれたように
作品作りをしていた時期があります。
この技法は、真っ暗な暗室の中で、真っ白いカラー写真用印画紙の上に何か物を置き、それをカラー引伸機で露光させる技法。
印画紙は、オレンジの光はシアン、緑の光はマゼンダ、紫の光は黄色というように、照射する色によって浮き出る色が変わります。
その特性を理解し、そして更に置く物の配置がそのまま焼き付くので、真っ暗な中で、それを綺麗な仕上がりを目指して色々試す訳です。
真っ暗な中でやる作業なので、焼き付けた後、像が浮き上がるまで何色で、どんな形が浮き出るか分からないスリルと感動があります。

フォトグラム作品はいくつかCasieさんにお預けさせて頂いているのですが、この「Spring has come.」は、疾走感を出したくてヨーグルト瓶を真っ暗な暗室の中でコロコロ、コロコロ転がして焼き付けました。
フォトグラムは、うまく露光できると、色がとっても綺麗に出ます。
（実はここに選出した6枚以外に露光し過ぎて黒くなったものや、残像が変てこなものなど沢山の失敗作が存在します。）

「Spring has come.」は、フォトグラムの色味とそのにじみの美しさの「全部入り」みたいな気持ちで、綺麗な色味の作品をバランスよく並べ、春が楽しみで踊り出すような気持ちを表現してみました。

額は、その綺麗な色味が引き立つように白い木の額に入れました。