Layers of Color 1501

「ノーテーマ」であることがテーマ

兵庫県出身、沖縄県在住のアーティスト。武蔵野美術学園油画科修了。千葉大学工学部デザイン工学科卒業。明石工業高等専門学校機械工学科卒業。

- 絵を描くようになったきっかけは?
自分の場合、何歳の、どの出来事というような特別なきっかけはないですが、中学生ぐらいの頃から「モノづくり」を仕事にしたい、それも自分の思いやこだわりを活かして...という希望は、なんとなくありました。

- 作品のテーマにしている事は?
重層的、唯一性、など絵画が持っている物理的な特性を最大限に活用すること。イデオロギー、言語、政治、社会状況に直結したり、他の表現ジャンルを説明するような作品は作りたくないと思っています。そういう意味では「ノーテーマ」で、「ただの絵画であること」が、自分のテーマ。絵画でしかできないことを、自分のやり方で探究していくことを意識しています。

- これからどのような創作活動をしていきたいですか?
シンプルに素直に「絵画を作り続ける生き方」を、これからの人生を賭けて全うしたいです。そして、その生き方が、そばにいる家族、他者から搾取せず、共感してもらえるものにして生きたいです。

2015年から始めた「Layers of Color」シリーズからは、具象的なモチーフの構造から解放されたところで、純粋視覚現象のような絵画を追求しています。

本作品は、同シリーズ第1作です。
明確なテーマもメッセージもモチーフもプランも無いところから、塗りや削りの工程が一つ終わるごとに次の工程をジャッジしていき、やがて完成と思われる画面が（向きも含めて）決定されます。

パネルは表裏両面貼り、裏面、側面にも地塗り、画面には直接アクリル絵具がのっていますが、下塗りと木目を潰す削りによるプレパレーションの後、部分、ベタ合わせて20層以上の描写としての塗りを重ねます。
そして、水をかけながら耐水サンドペーパーで研削していきながら画面を造っていきます。

藤本の作品には、この「Layers of Color」シリーズのように非具象的なもから、モチーフや風景などを使った具象的なものまで、画面スタイルにバリエーションがあります。
ただ、初期から最新作まで全ての作品はアクリル絵具の積層と研削で絵面を描き出していくことで生み出されています。そのため、作品のマチエールや発色感は常に一貫しています。

絵画の特性の一つ、「重層的なマジック」を活かしきること。
支持体上に絵具によってしか存在し得ない光景。
物理的な結晶としての絵画。
私の欲求に合った制作方法を1999年に見つけ、ペインティングの可能性を追求しています。