染2022R3-361

作品のタイトルである『染』という漢字には色々な意味があります。一般的には染める行為や染まる様を表わします。それは物理的な着色の行為から　文化や思想に至る人々の精神の移り変わりまで多方面に至ります。その現象は常に非常に小さな点から始まり、やがて大きな面となり空間へと広がりす。四季折々の自然の風景の移り変わり、一滴の染料から広がる染織の世界など、美しいイメージを思い浮かべる一方で近年ではチェルノブイリや福島の原発事故による放射性物質による汚染やコロナウイルスによる感染など多くの人は悪い意味を連想されることでしょう。放射性物質は風に乗り海流に乗って汚染範囲を広げました。目に見えない小さなウイルスは移動手段の発達した現代のシステムに乗って短期間に世界中に広がり私たちの構築してきた概念や基準は変化しまた。この作品はそういったネガティブなイメージも含んだ染まりゆく物のイメージを表現しています。作品に対峙した時の意識によって染まりゆく結果を美しいと感じたり受け入れ難いと感じる人もいるでしょう。染まってしまったものが浄化され戻ってゆく様を連想されるかもしれません。それぞれの思いを持って、自分自身とこの世界との関わり方を考えるキッカケになればと思っています。

シリーズ『染』色による3つの要素。
黄系の作品は空間（光.音.匂い.空気）、赤系の作品は生命、青系の作品は大地と水を主に表現しています。

作品を構成するパズルと制作工程。
作品を構成する13.5mmX13.5mmのパズルピースは縦横無限に連鎖出来るようデザインされた作家オリジナルで1mm厚の紙製ボードを型抜きして製造されています。
制作にあたっては1つ1つのパズルピースをつなぎ合わせて大きな画面を構成します。白地の部分は紙の風合いを残すために無着色で、加筆部分は薄墨のように薄い絵具を何層も塗り重ねて濃淡を表現し、1ピースごとに塗り分けています。