y gion CURATED ARTIST ame

日本の「グレー」な街並みと、
タトゥーでは表現できないアート

ame(アメ)

大阪府出身、大阪府在住のタトゥーアーティスト。タトゥーアーティストの妻や、ネパールでの出会いをきっかけにタトゥーアートの道へ。バンコク、チェコなどでの活動を経て、現在は大阪にて活動中。平面絵画作品や立体作品などの制作も行う。

Instagram:https://www.instagram.com/ame_securityblanket/

ネパールでの衝撃的な出会い

ーータトゥーアーティストとして活動されているameさんですが、タトゥーとの出会いはどんなかたちだったんですか?

ame :妻が、元々タトゥーアーティストであったことが、大きなきっかけですね。

ーーそれまでは、ameさん自身タトゥーは入っていなかったんですか?

ame :そうですね、初めてタトゥーを彫ったのは妻と出会ってからです。その時も、自分自身が、彫る側(タトゥーアーティスト)になろうとは全然思っていなかったんです。だって、夫婦で同じ職業って大変そうじゃないですか(笑)。

ameさんの作品

↑ameさんのタトゥー作品

ーーたしかに……(笑)。その想いが変わったのはいつだったんですか?

ame :新婚旅行を兼ねて行ったネパールで、妻が参加するタトゥーの祭典に遊びに行ったんです。その祭典には、世界中のタトゥーアーティストが参加していたのですが、その中の1人が、立ち振る舞いから絵柄まで、すごくかっこよくて。当日その方にタトゥーを彫ってもらったのですが、すごく感銘を受けて、僕自身も「タトゥーアーティストになりたい」と思うようになりました。

ーーなるほど。そこからタトゥーアーティストの道が始まるんですね。

ame :そうですね。元々海外に旅行をすることが多かったのですが、そうなるとどうしても海外にお金を払いっぱなしで、日本に帰ってお金を貯めてまた行く……という流れになるんです。それが普通といえば普通なのですが、行った先の海外でも自分でお金を稼げる方法はないかな、と考えていたので、海外でも通用するタトゥーアーティストを目指しました。

ーーその言葉の通り、現在は国内外さまざまな場所でお仕事をされていますよね。

ame :ここ4、5年の間は、福岡、バンコク(タイ)、チェコなど、色々な場所に住んで仕事をしていましたね。今はコロナウイルス感染拡大の影響で、大阪にいますが……。

ーー状況が良くなれば、チェコに戻る予定ですか?

ame :はい、基本的にはそういうつもりです。元々は、妻と一緒に「チェコでタトゥーショップを開きたいね」と話していたので、それを実現したいですね。でも、もしこのまま日本に居続けるのであれば、日本でショップを開くことも考えています。

日本を象徴する「グレー」を取り入れて

ーーameさんのルーツにも迫ってみたいと思います。幼い頃や学生時代、特に好きだったことや続けていたことはありますか?

ame :10代の頃は、絵を描くよりも体を動かすことが好きでした。小学校時代はサッカー、そのあとはスケートボードをやっていましたね。

ーースケートボードは、カルチャー的に、今と通ずる部分もありそうですね。

ame :そうですね。カルチャー的にもそうですが、「街の見方」という点では、かなり影響を受けているかもしれません。例えば、街にある花壇や段差なんかも、スケートボード目線で見ているんです。日本でも海外でも、街並みからインプットして、絵としてアウトプットすることは多いですね。基本的に、“自分が体を動かして見たものを絵に落とす”ということが多いかもしれないです。

ameさんの作品

↑「雨」過多な情報や時間の流れの速さを肌で感じつつも流される事なく、街を歩んで行くさまを描いた作品です(ame)

ーーなるほど。他の人とは違う視点で街並みを見ているんですね。

ame :そうなんです。でも、考え方でいうと、サッカーをやっていたこともかなり影響していると思います。

ーーというのは?

ame :僕がサッカーをやっていた当時は、ちょうど日本人の選手たちが海外に進出するようになってきた頃で。それに憧れを持って、「海外で勝負したい」という精神が、僕の中に生まれたような気がします。当時はサッカーで、そのあとはスケートボードで、みたいな感じで、“何で海外に行くか”は変わっていくものの、海外に身を置きたいという根本的な想いは変わらないですね。

ーー今は、実際に海外で活躍している訳ですが、海外で活動する中で「日本人」としてのタトゥーアートを求められることもありますか?

ame :はい、最初の頃は、日本人だと伝えると「和彫をやっているのか?」と聞かれることは、多かったですね。でも、僕は和彫をやらないので、自分なりの日本スタイルを考えてみたところ、僕の中で、日本のイメージカラーは「グレー」だったんです。なので、日本スタイルとしてグレーを取り入れることは多いです。

ameさんの作品

↑「和」外国から見た“昔の日本感”をテーマにし、自分のスタイルでもある、アウトラインの無いキュービック調を用いて描いた作品です(ame)

ーーなぜグレーなんですか?

ame :日本の都心部は、街並みが無機質なビルだらけで、「グレー」なイメージなんです。例えば、バンコクなんかも都会ではあるんですけど、街並みには色々なカラーがあるし、ヨーロッパでいうと、パステル調のカラーがたくさんあったり。グレーは、日本ならではの色かなと思います。街並みだけじゃなくて、イエスノーがはっきりしていない、日本人の象徴としての「グレー」の意味もありますね。

タトゥーと平面絵画

ーータトゥーアーティストとして活動する中で、平面絵画を発表し始めたのには、どんなきっかけがあったんですか?

ame :タトゥーを始めると同時に、たくさん絵を描くようになったことがきっかけですね。元々絵を描くことは好きだったのですが、タトゥーを始めてからは、描く量がかなり増えていて。

ameさんの作品

↑「曼谷」日本の都会と違い無機質なビル街の中にも色鮮やかな植物や自然、寺院が溶け込んでいるバンコクをイメージして描いている作品です。

ーータトゥーと平面絵画は全く別物かと思いますが、ameさん自身の中ではどのような区別をしていますか?

ame :平面絵画にも、タトゥー用に描いた「タトゥーフラッシュ」というものと、タトゥーとは関係のない作品の2種類があって。タトゥーフラッシュはタトゥーとしても彫れるデザインを、それ以外はタトゥーでは表現できないようなものを絵にしています。

ameさんの作品

↑タトゥーフラッシュ(ame)

ーーなるほど。タトゥーで表現できないものは、例えばどんなものですか?

ame :スプレーの粒子感とかは、どうしても皮膚の上で表現できないので、そういったものですかね。タトゥーは、お客さんの体を考えた上で、決められたフィールドとルールの中で描かなくてはならないので、それ以外の時には、縛りを極力なくして自由に制作したいなと思っています。なので、平面絵画にこだわらず、立体作品にもチャレンジしたいですね。

ーーこれから新たな作品がたくさん生まれていきそうですね!

ame :そうですね。それと同時に、タトゥーをあまり知らない人に向けて、フィジカルで体験できるような場を作りたいです。徐々にポピュラーになりつつはありますが、まだまだタトゥー文化を身近に感じていない人も多いですからね。

ーーたしかにそうですよね。

ame :なので、それを少しでも変えていきたいです。数ヶ月前に、沖縄の「やんばるアートフェスティバル」というイベントで、「架空のタトゥーショップ」を作ったんですけど、それがすごく面白かったんです。もちろんそこでタトゥーを実際に彫る訳ではないんですけど、タトゥーベッドを置いたりして、空間を作ったり。

ameさんの作品 ameさんの作品

↑架空のタトゥーショップ

ーーそこに来る方は、タトゥーに触れたことのない人が多かったんですか?

ame :ほとんどが、そういう方ばかりでしたね。僕自身は、タトゥーすることが当たり前になっているけれど、世の中はそうじゃない人がほとんどで、色々と質問をもらって説明ができたり、すごくいい機会でした。

ーー聞きたいけど聞けないことっていっぱいありそうですもんね。

ame :そうなんですよね。僕ですら、他のタトゥースタジオに入るときは、未だに緊張するし、入りづらいなと思うことが多いので、タトゥーに馴染みのない皆さんからすれば、もっと聞きづらいですよね(笑)。タトゥーアーティストとして、平面作品の制作はもちろんですが、もっとタトゥーを身近に感じてもらえるような空間や機会を、どんどん作っていけたらと思っています。

Best Art Spot

ameさんがアートを感じるスポット

変わりゆく「街並み」

ameさんがアートを感じるスポット

すごくざっくりしているのですが「街並み」が好きです。

街の見方を変えると、気づくことがいっぱいあるはず。日本人は、時間に追われることが多いと思うので、意外と街の変化に気づいていないことが多いと思うんです。流行りのお店ができたとか、そういうことには気づくのに、この店の前はこの店があってとか、この道はこう変わったとか、そういうことには気づかないんですよね。

海外と日本を行き来していたからこそ、気づけたような気もするのですが、変わりゆく「街並み」こそが、1番のアートなんじゃないかって思います。

My Rule

ameさんが絵を描く上でのルール

「明るい時間帯に、絵を描くこと」

前までは、夜中に絵を描くことが多かったのですが、子供が幼稚園や小学校に行きだしてからは、基本的に、朝から夕方までの明るい時間帯に絵を描くことが増えました。

友達とアトリエをシェアしているので、天気が良ければ屋上で描いたりもします。