日記を綴るように描く、色彩豊かなアート。
美術館で出会った1枚の絵をきっかけに制作を開始。試行錯誤して描かれるその心地の良い色彩に癒されて。
- 絵を描くようになったきっかけは?
東京都現代美術館の常設展で辰野 登恵子さんの「UNTITLED 90-14」という無題の大きな抽象画を見たのがきっかけでした。辰野さんの絵は赤と緑の鮮やかな色彩で芋虫のような物体が画面いっぱいに描かれているのですが、それが何を描いているのかも全く分からないまま、ただその鮮やかな色に見惚れて、絵の前に立ち尽くしました。絵ってこんなにも人を癒すことができるんだ‥と。そしてその日は、人生の中でも大きな転...
日記を綴るように描く、色彩豊かなアート。
美術館で出会った1枚の絵をきっかけに制作を開始。試行錯誤して描かれるその心地の良い色彩に癒されて。
- 絵を描くようになったきっかけは?
東京都現代美術館の常設展で辰野 登恵子さんの「UNTITLED 90-14」という無題の大きな抽象画を見たのがきっかけでした。辰野さんの絵は赤と緑の鮮やかな色彩で芋虫のような物体が画面いっぱいに描かれているのですが、それが何を描いているのかも全く分からないまま、ただその鮮やかな色に見惚れて、絵の前に立ち尽くしました。絵ってこんなにも人を癒すことができるんだ‥と。そしてその日は、人生の中でも大きな転機になり、漠然と「自分もいつかこんな抽象画を描けたらなぁ」と思いました。それは当時は絵を描いたこともなく、ただ絵を見ることが大好きだった自分が、自ら描いてみたいという想いに変わった瞬間でした。今は自分がその時感じた幸福感や癒しを、まるで伝染するように、見てくれる人達に届けられたらいいなと思いながら描いています。
- 普段の制作はどのように行なっていますか?
毎日、日記を描くように描いています。描けない日もありますが、そんな日は作品とは別に落書きのようなドローイングを描くようにしています。ドローイングを描くことで、普段の作品のヒントになったり、良い影響を与えている気がします。
- 作品のテーマにしている事は?
私は日記をつけるときに、あった出来事ではなく、その日の気持ちを書いてしまいます。そんな役立たずの日記を、同じように書いては読み返し、その日の出来事を推測したりします。文字はよくよく見ると、力強かったり、弱々しかったり、殴り書きだったり、滲んでいたり。時々星やハートマークも添えられていて、線や形に滲み出た「感情」が、ゆっくりと懐かしく思い起こされます。そんな日常の中で生まれる様々な「感情」を、絵の具で表現したい、絵から何かを感じてもらいたい、と思っています。日記の揺らぐ文字に沁みでた想いを、絵の具の色や形やマチエールで表わせないだろうかと試行錯誤していく中で、色同士が混ざり合い、美しく呼応しだしたとき、言葉では表現し得ない、想い以上の何かが伝わるような気がしています。