PICK UP ARTIST vol.9 大園 亮介

幼い頃描いた「富士山」をきっかけに
風景に魅了され、風景で魅了する

あの絵を描く、あの人は、どんな人生を送って、どんなことを考えながら生きてきた?

Casieに所属する人気アーティストにインタビューするこの企画。

第9弾は大園 亮介(おおぞのりょうすけ)。愛知県に生まれ、現在は東京都八王子市にある自宅 兼 アトリエにて「風景画」を生み出す彼には、陶芸作家としての顔もある。

幼いころに見た“富士山”をきっかけに「風景」に魅了され、「風景」で魅了し続ける彼のルーツに迫ります。

大園 亮介

愛知県生まれ・東京都八王子市在住の絵画アーティスト。東北芸術工科大学 芸術学部洋画コース卒業、佐賀県立有田窯業大学校専門課程陶磁器科2年制コース卒業。卒業後には、窯元での勤務経験も。絵画作品以外に陶芸作品も多く発表するなど、幅広い分野で活躍中。

web site: https://ryosuke-ozono.jimdofree.com/

幼き日、スケッチした「富士山」が原点

ーー大園さんといえば、主に緑のある「風景画」の印象が強いですが、風景画をメインに描くようになったきっかけは?

大園 亮介(以下、大園) :幼少期から絵を描くことが好きだったのですが、その中でも小学校に入る少し前くらいの時に、旅行先で「富士山」のスケッチをしたことが、僕の原点かもしれません。

子供の写真

ーーへー!その頃からスケッチブックを持って旅行に行っていたんですね。

大園 :そうなんです(笑)。旅行先で見た富士山に幼いながらすごく感動して、その場でスケッチをしました。当時の記憶は曖昧なのですが、この写真を見て思い出しました。この頃から「風景」が好きだったんだなぁって。

ーースケッチは誰かに教わって始めたことだったんですか?

大園 :いえ、自主的に始めたような気がします。当時から「絵」だけではなくて「工作」だったり、ものづくり全般が好きでした。両親の影響とかは特になかったのですが、後々聞いた話では、曾おじいちゃんが、絵描きだったそうです。もしかしたら、その血を引いているのかもしれませんね。

大園さんの絵

↑「水のある風景」大園 亮介

ーー大園さんは、愛知県で生まれて、東京、東北、九州、そして現在は八王子(東京)在住と、色々な場所に引越しをされていますよね。

大園 :そうですね。元々父親の転勤が多かったこともあるのですが、大学では山形県、その後陶芸の学校に通っていた時には佐賀県に住んでいた時期もあります。

ーー山形の美術大学へ行こうと思ったのは、なぜだったんですか?

大園 :自然が豊かな場所で、絵を描きたいと思ったからですね。大学時代を山形県で過ごしましたが、山形だけでなく青森の恐山や白神山地などまで、しばしば足をのばしたりして、本当に過酷でしたよ(笑)。

ーーどんな生活だったんですか?

大園 :今思えば、すごくいい経験になったんですけど、当時住んでいた場所は、雄大な自然がすぐ近くにあって美しい景色を見れる分、寒さや山の険しさなどは、かなり過酷なものでした。いつも外に出て絵を描いていたのもあって、厳しさを直に感じましたね。時には雪の中で描くこともありました。

ーーどんな過酷な環境であっても、「直接肌で感じながら描く」というのは大園さんならではのこだわりなんですね。

大園 :そうですね。写真を撮ってそれを見ながら描くのと、実際の景色を見ながら描くのとでは、見えてくるものも、色味の伝わり方も大きく違うと思うんです。僕は、自分の目で見た色をしっかりと伝えたいなと思っています。大学時代には、自転車に絵の道具を積んで、山形から鹿児島まで自転車旅行を敢行したことも。その旅先で、各地の風景を心に染み込ませることができた気がします。

大きく広がる空間に魅了されて

ーー幼い頃から「風景画」を描き続ける大園さんですが、「風景」に惹かれる理由について考えたことはありますか?

大園 :静物画や人物画ももちろんいいのですが、僕の場合は、大きく広がった「空間」や、その「開放感」のようなものに魅力を感じているのだと思います。美術の高校に通っていた時も「スケッチ合宿」という行事で、ずっと海でスケッチをしていたせいで、めちゃくちゃ日焼けをしてしまったことがあるくらい(笑)。

大園さんの作品

↑個展「水のある風景(ギャラリーPortfolio / 東京)」
(引用https://ryosuke-ozono.jimdofree.com/%E5%B1%95%E7%A4%BA/)

ーー(笑)。本当に昔から風景を描くのが好きなんですね。

大園 :そうなんですよね。ただ「描きたい」と思えるような風景は、そんなに多くなくて。その場所を見つけることが結構大変だったりします。場所自体は素晴らしくても、天気や時間帯などによってコンディションがよくないと描けなかったりするので。

ーー大園さんにとって「描きたい」風景って、どんなものですか?

大園 :基本的には「緑」のある風景が好きなので、春・夏を描いた作品は多いかもしれません。でも、その時期によっても、描きたい風景が変わったりもします。去年は「水辺の風景」をよく描いていたんですけど、今年は「山の風景」へシフトチェンジしようかなと思っていて。原点に戻って「富士山」も描いてみようかな? なんて考えているところです。

節目で描く「自画像」的作品

ーーそういえば、大園さんのwebサイトには、風景以外の作品も数点ありますよね。これはどんな作品なんですか?

大園 :風景画以外の作品は「自画像」的な位置付けで描いています。

大園さんの作品

(引用https://ryosuke-ozono.jimdofree.com/%E4%BD%9C%E5%93%81/%E5%8D%8A%E5%85%B7%E8%B1%A1%E7%94%BB/)

ーーそれを描こうと思うのは、どんな時?

大園 :「描きたい」と思う気持ち自体は風景画と一緒なんですけど、日々ふつふつと溜まっていく「何か」を発散させるようなイメージですね。風景画とは違って、自分自身を表現するために描いているのだと思います。でも、こういった作品を描くときは、かなりエネルギーを消耗してしまうので、描いていて楽しいのは、断然「風景画」ですね(笑)。

ーーそれでも時々描くということは、大園さんにとって必要なものではあるということですよね。

大園 :そうですね。自分自身を見つめ直すためにも、節目節目に必要なことではあると思います。

ーー美術大学を卒業してからは、九州へ引っ越し、陶芸の学校へ通い始めたそうですが、陶芸に興味を持ったきっかけは?

大園 :元々、粘土や土いじりをすることが好きだったので、陶芸にも興味があったんですけど、なかなか勉強をする機会がなくて。大学を卒業してから、本格的に始めることを決意しましたね。「絵」はもちろん続けるつもりでしたが、違う分野の技術を勉強することで、絵に対してもいい影響が出るんじゃないかなと思っていて。陶芸の学校を出たあとは、窯元で働いていたこともあります。

大園さんの作品

(引用https://ryosuke-ozono.jimdofree.com/%E4%BD%9C%E5%93%81/%E9%99%B6%E8%8A%B8/)

ーー今は、どちらも並行して制作している感じですか?

大園 :そうですね。自宅には、小さな釜もあるので、絵を描きつつ、好きなタイミングで陶芸の方も制作しています。例えば、絵に行き詰まった時には、気分転換に轆轤(ろくろ)を回してみたりとか。リフレッシュにもなるので、いいですよね。

ーー両方にとって、いい影響を与えていそうですよね。

大園 :はい、自分の中でも、それが狙いになっていて。色々な刺激を取り込むことで、作品を発展させていけるのではと思っています。1つのことだけに集中してしまうと、どうしても視野が狭まってしまうので、出来るだけ広い視野を持って制作していたいですね。

グランド・キャニオンを描くのが夢

ーー大園さんは、今後新しくチャレンジしたいことはありますか?

大園 :毎年必ず1回はやるようにしている展示は、これからも続けていきたいですね。あとは、絵画と陶芸を組み合わせた展示も積極的に開催していきたいです。

大園さんが描いた絵

↑「新緑」大園 亮介

ーーもしも今、どこにでも行けるのであれば、どこの風景を描いてみたいですか?

大園 :グランド・キャニオン(アメリカ)ですね。あれこそ「地球の原風景」という感じがするんです。簡単に行ける場所ではないですが、一度は行って描いてみたいです。

ーー大園さんが描くグランド・キャニオン観てみたいです。

大園 :いつか行きたいですね。以前イタリアへ画材を持って行った時、空港の検査で引っかかってしまったことがあるので、次回は気をつけます。

ーーえ、どういう事ですか!?

大園 :油画の道具を持って行ったら、飛行機に乗る前の検査で引っかかってしまったんです。絵の具は大丈夫だったんですけど、油は引火性があるのでダメだったみたいで、取り上げられてしまって、結局現地調達しました……。

ーー確かにそれはダメですね(笑)。

大園 :次回から教訓にします(笑)。

見出し1

Best Art Spot

大園さんがアートを感じるスポット

あぶくま洞 / 福島県田村市

大園さんがアートを感じるスポット

(大園さん撮影)

福島県・田村市にある「あぶくま洞」は、初めて訪れた時にかなり衝撃を受けました。長い歳月をかけて自然の中で作り上げられた鍾乳洞は、まさに「自然の神秘」。これこそ、アートだと思います。風景画としてはまだ描いたことがないですが、2018年に描いた半具象画は、一部この「あぶくま洞」にインスピレーションを受けている部分があります。

<スポット情報>
https://abukumado.com/
所在地:福島県田村市滝根町菅谷東釜山1

見出し2

My Rule

大園さんが絵を描く上でのルール

「画材を持って散策」

僕の場合は、風景との出会いが制作のスタートなので、その為にはリサーチをしたりすることも多いです。「ここ」と決めて意識的に出かけることもあれば、画材とキャンバスを持って、自転車でふらふらと徘徊する間に、素敵な風景に出会うこともあります。いい風景に巡り合えば、その場でスケッチを始めるので、道行く人に話しかけられることもしばしば。「何を描いているの?」なんて、突然おにぎりをもらったこともあります(笑)。そういうコミュニケーションも、また楽しいんですよね。

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