綺麗なだけじゃつまらない
ホオズキの中にある「真実」
あの絵を描く、あの人は、どんな人生を送って、どんなことを考えながら生きてきた?
Casieに所属する人気アーティストにインタビューするこの企画。
第14弾は、NIM / 國宗恭史。愛知県出身、愛知県在住の絵画アーティスト。映像デザイナーとして20年活躍した経歴を持つNIMさんが、2年前アナログアートの制作を始めた理由とは?
メインモチーフとして描く“ホオズキ”は、ただ美しいだけでなくどこか妖しさを感じる独特な世界観。その内側に込められた思いや「真実」に迫ります。
NIM(ニム)
愛知県生まれ、愛知県在住のアーティスト。20歳から約20年間、映像デザイナーとして活躍する中で感じたデジタル表現への疑問をきっかけに、アクリル絵具やフェルトペンを使って絵画の制作を開始。主に「ホオズキ」をモチーフとした、独特な世界観の作品が、国内外にて注目を集めている。
Instagram:https://www.instagram.com/nimwinnim/
草間彌生の作品を観て、ハッとさせられた
ーーNIMさんは20歳の頃から約20年間、映像デザイナーとしてお仕事をされてきたそうですね。
NIM :はい、20歳で制作会社に入社、30歳で独立して、CMや企業紹介の映像、モーショングラフィックスなど、様々な分野の映像制作に関わってきました。
ーーいわゆる「デジタル業界」にいたNIMさんが、アナログ作品を描くようになったのには、どんな理由があったんですか?
NIM :映像の仕事を長く続ける中で、デジタル表現や、ビジネスとしてのクリエイティブ活動に疑問を持つようになったんですよね。仕事自体はうまくいっていて、周りからも褒めてもらえるんですけど、なんだか素直に喜べないというか……。お金の為にやっている感が、どうしても拭えなくて。
↑「ホオズキ【花魁】」NIM
ーーデジタル表現を長く続けてきたからこそ、生まれた疑問かもしれないですね。
NIM :そうですね。そんな風に悩んでいたちょうど2年くらい前、事務所のビルに飾られていた、草間彌生さんの作品を目にしたんです。それはビルのオーナーさんが飾っていたものなんですけど、ふと見た時に「自分が10代の頃に描いていた絵にそっくりだなぁ」と思って、ハッとしたんです。デジタルの世界で隠していた、自分なりの自由な表現があったなぁって。それをもっとオープンにしてもいいのかもしれないなって、気づいたんですよね。
ーーそこから、実際に描き始めたんですね。
NIM :なんだか「お前も描け」と言われているような気がしたんです。でも、急に描き始めたもので、周りからは頭がおかしくなったんじゃないかと、心配されましたけど(笑)。
ーーたしかに、周りの人はびっくりしますよね(笑)。それから2年くらい経ちましたが、今現在はどうですか?
NIM :んー、より理解不能になっているかもしれませんね。目に見えるような結果が出れば、みんな理解してくれるとは思うんですけど、今はまだ、“狂気の沙汰”って感じに見られているんじゃないかな(笑)。
ホオズキの中にある「真実」
ーーNIMさんといえば、“ホオズキ”をモチーフにした作品が印象的ですが、ホオズキにはどのような思いが込められていますか?
NIM :元々、ホオズキの花言葉は「嘘・偽り・ごまかし」という、ネガティブな意味を持っているんです。でも、ホオズキは枯れると葉脈だけ残って、中身の「実」の部分が、全て丸見えになるんですよね。この状態が「真実」を表しているんじゃないかなと思い、モチーフに選びました。
ーーNIMさんが絵を描き始めた理由にも、繋がる部分がありそうですね。
NIM :そうですね。現代社会は、どんどん“見えづらい世界”になっていっていると思っていて。その中で本質を見抜く大切さを、作品を通して伝えられればいいなと思っています。
ーー絵を描き始めた当初は、ホオズキ以外にどんなモチーフを描いていましたか?
NIM :今はカラフルな作品が多いのですが、最初の頃はペンを使って白黒で描いていました。抽象的な物から動物まで色々。中でも「ファスナー」の作品は、ファスナーを開けると、中に「真実」が見える、という意味があって、これはホオズキ作品にも繋がるのかなと思っています。
↑「ファスナー」NIM
ーーInstagramを見ると、徐々に今現在の作風に近づいていっているのが分かります。
NIM :そうなんですよね。白黒の時代は、今に繋がる「設計図」のようなものだったのかもしれないです。
ーー今後は、ホオズキにモチーフを絞って描いていく予定ですか?
NIM :基本的にはそうですね。他にも「鶴」をモチーフにした作品を描いていたりもするのですが、「芯」はブレないよう、統一感を出すように心がけていたり、描くモチーフは慎重に選ぶようにしています。
↑フランス・パリ『サロン・ド・アール・ジャポネ2019』にてグランプリを受賞。
ーー「芯」や「統一感」の部分で言うと、細かい描き込みや独特な色使いは、NIMさんらしさですよね。
NIM :そう言ってもらえると嬉しいです。僕自身、誰に習うこともなく、自分の好きなように描いていたこともあって、最初の頃は「これでいいのかな……」と不安になることもあったんです。でも、半年前ぐらいに、フランス・パリの『サロン・ド・アール・ジャポネ2019』で、グランプリをいただいたことをきっかけに、僕のやり方でよかったんだなと自信がつきましたね。そこからは、誰かから習っていないからこその、自由な発想が僕の作品の魅力でもあるんじゃないかなと思っています。
絵を描くことに自分の力を注ぐ人生に
ーーNIMさんが、本格的に制作を始めたのは大人になってからですが、幼い頃も絵を描くことは好きだったんですか?
NIM :そうですね。デザイン学科に進んだ兄の影響もあって、幼い頃から絵を描くことは好きでしたね。でもその絵は、周りの友達が描く絵とは少し違う、“独特な絵”だった記憶があります。それこそ、草間彌生さんの描く絵のような。それは当時も今も変わらない部分かもしれないですね。
ーー当時、絵の他に興味を持っていたことや覚えていることはありますか?
NIM :スポーツと美術が好きな子供で、勉強は全然ダメでしたね(笑)。ただ、動物や植物と触れ合う機会が多かったのもあってか、人間と自然の共生については、当時からすごく興味を持っていました。
↑「ホオズキ【三日月】」NIM
ーーそこから、映像業界を志したのには、どんな理由が?
NIM :実は、志したという訳ではなく、なんとなく映像の制作会社に入って、という感じなんですよね(笑)。元々通っていた専門学校も、映像関係の学校ではなく、建築系の専門学校だったんですよ。だから、専門学校ではインテリアデザインなどを学んでいて、映像の勉強はしていなかったんです。でも当時は、Apple社のMacが出てきた頃だったので、PCを触るのが楽しくなっていって、デザインの勉強をしながら会社に入った、と言う経緯なんですよね。なんとなく、自己流でうまくいっちゃった感じです(笑)。
ーーそこから30歳で独立されて。今現在も映像デザイナーのお仕事は続けているんですか?
NIM
:仕事としては続けているのですが、今はほとんどの力を「絵」に注いでいますね。もう、お金の為に自分の力を使うのはやめようって、思っているんです。
人生の目標として、世界で活躍するアーティストになることを掲げています。たとえば、有名ブランドとコラボをできるような。でも、それは僕自身が有名になりたいという訳ではなく。ただ、「世の中から必要とされる存在」になりたいなと思っています。
Best Art Spot
NIMさんがアートを感じるスポット
国立故宮博物院 / 台北市(台湾)
(引用:Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%BD%E7%AB%8B%E6%95%85%E5%AE%AE%E5%8D%9A%E7%89%A9%E9%99%A2)
台湾に旅行で行った際に訪れた「国立故宮博物院」。広い敷地で、建物もすごく素敵なのですが、展示されている作品も衝撃的でした。例えば、白菜や豚の角煮の形をした石。何故これが秘宝なんだ、と思わず言いたくなるような作品たちを観て、アートって本当に自由だなぁと実感しました。
台湾はすごく好きな国で、昨年(2019年)の3月には『台日芸術博覧会』にも出展しました。近々、また台湾に行って、個展なども開催できたらいいなと考えています。
↑『台日芸術博覧会』での展示の様子
【スポット情報】
https://www.npm.gov.tw/ja/
My Rule
NIMさんが絵を描く上でのルール
「“普通ではない”こと」
アートって、ただ綺麗なだけじゃつまらないと思うんです。なので「何これ!?」と思わせるような、いい意味で違和感を与える、普通ではない表現になるように制作をすることを、僕のマイルールにしています。
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