おしえて制作のヒミツ | 対話をテーマに描くKayo Nomuraさん

アートは見た目だけではなく、アーティストによって込められた想いや自分の想いを表現するために使用している技法など様々な角度から見る楽しさがあります。この記事では、さまざまな作品の姿を紹介します。


今回は対話をテーマに描くKayo Nomuraさんの作品の姿に迫ります!

「英語と日本語を組み合わせた詩のような作品名にすることで、作品を見た人が自然と作品に入り込むようにメッセージ性のある作品を描くことを大切にしています」と話すKayo Nomuraさんの作品には一体どんな背景があるのでしょうか?


Kayo Nomura
愛知県名古屋市出身、米国育ち、兵庫県在住のアーティスト
マスコミ、外資系企業、シンガポール勤務など、様々なキャリアを重ねた後、絵画の世界へ。定期的に個展で作品発表をする他、ライブドローイングなどのイベント、また対話をしながらその方の内面を描くアートセッション「Dialogue Drawing」を提供しています。


《Rain of Universe -恵みの粒たち-》


↑《Rain of Universe -恵みの粒たち-》


Kayo Nomuraさんが大切にしている自然の一つである「雨」をテーマに描いた《Rain of Universe -恵みの粒たち-》。


《Rain of Universe -恵みの粒たち-》は「雨が降っていたらなんとなく残念な気持ちになったり、無意識のうちに雨よりも晴れの方が良いといった価値観を多くの人が持っているかと思います。私はそんな雨にも雨の役割だったり、美しさがあると思うんです」と話すKayo Nomuraさんの想いから生まれた作品です。


雨の日があるからこそある美しい晴れの日


《Rain of Universe -恵みの粒たち-》では作品名にも「恵みの粒たち」とあるように、雨の日があるからこそ晴れの日もよりありがたい日になる晴れと雨の対比が描かれています。


雨は嫌いと思いながら雨を見ると「雨って嫌だな」といったネガティブな気持ちが先に出てきます。しかし、耳を澄まして雨の音を聞くとどこか美しく感じます。Kayo Nomuraさんは「雨の日ってどこか世界が少し静かになったように感じるので自分の内側に向き合いやすくなる気がします。雨は自然界で必要不可欠な要素の一つですし、私たち人間にとっても悪いものではないと思うんです。今日は雨だからなんとなく嫌だなと思うのではなくで、今日はどんな雨の日なのかなといった期待を持って毎日を楽しむきっかけになってくれたら嬉しいです」とこの作品に込められた想いについて話しています。


そんな《Rain of Universe -恵みの粒たち-》は雨の日を表現している作品であることから明るい色彩では描かれていませんが、一言に雨といっても様々な雨がある多様な雨の姿を絵の具のにじみや様々な色の重なり合いから表現しています。


色のにじみから表現する枠にとらわれない豊かさ


対話をテーマに作品を制作しているKayo Nomuraさんはたくさんの水を絵の具やインクに混ぜて描くことで生まれる意図しない色合いから枠にとらわれない自然や人の豊かさを表現しています。


絵の具やインクに水を混ぜて描く技法を用いて作品を制作するKayo Nomuraさんの作品では、水との相性がよく、色の発色が綺麗にでる水彩紙が使われています。


↑制作の様子(写真提供:Kayo Nomuraさん)


《Rain of Universe -恵みの粒たち-》は雨をテーマに描かれている作品であることから明るい色彩を用いて描かれている作品ではありません。しかし、一言に雨といっても様々な雨があるように多様な雨の姿を絵の具のにじみや色の重なり合いから表現しています。


↑《Rain of Universe -恵みの粒たち-》部分


様々な色から生まれる色の調和


《Rain of Universe -恵みの粒たち-》では様々な色が使われながらもどこか不思議と調和している綺麗な色合いで表現されています。そんな《Rain of Universe -恵みの粒たち-》は雨の日には見ることのできない雲の上の夕日を雨粒を通して見ているかのような情景を想像して描かれています。


↑《Rain of Universe -恵みの粒たち-》部分


額縁は人間の髪型


《Rain of Universe -恵みの粒たち-》は黒色の額縁に額装された作品です。


「額縁は人間でいうところの髪型だと思っています。髪型を変えると人の印象も大きく変わるように絵も額縁を変えると印象が変わります。やはり、飾る時に額縁があるとより眺める対象になると思っているので、額縁も作品の一部として考えています」と話すKayo Nomuraさんは額縁にもこだわって制作しています。


対比から楽しむアート


Kayo Nomuraさんは「この作品を通して空を眺めたり、自然に思いを馳せたりするきっかけになってくれたら嬉しです」と話しています。


《Rain of Universe -恵みの粒たち-》は明るい作品ではありませんが、あえて明るい作品と並べて飾ることで生まれる作品の対比を味わうこともこの作品の楽しみ方の一つです。


↑左:《Rain of Universe -恵みの粒たち-》、右:《Perfectly Imperfect -見事なまでの「不完全」でいい-》


窓の近くに飾りながら雨をはじめとした自然と向き合ってみるのも良いかもしれません。是非この作品を通していつもとは違った自然を楽しんでみてはいかがでしょうか。




《Dialgoue- もうひとりのワタシとの対話-》


↑《Dialgoue- もうひとりのワタシとの対話-》


Kayo Nomuraさんが大切にしている自分との対話をテーマに描いた《Dialgoue- もうひとりのワタシとの対話-》。


Kayo Nomuraさんは「自分自身との対話」を作品を制作する上で大切にしています。「作品を見るといった行為自体が自分と自分の内側との対話を促すものだと思っています」と話すKayo Nomuraさん。《Dialgoue- もうひとりのワタシとの対話-》では「自分自身が今何を感じてどんなことを考えているのか」といった一人の自分ともう一人の自分との対話が表現されています。


飾って引き締まった空間に


Kayo Nomuraさんは「どこか自分が無意識に落ち着いていられる場所に飾っていただいて、コーヒーを飲みながら眺めて楽しんでもらえたりすると嬉しいです。作品自体は額縁や余白部分が黒色なので飾る場所が引き締まった印象を受ける空間になるかと思うので、ワンポイントインテリアとして飾って頂いても楽しんで頂けると思います」とこの作品に込められた想いについて話しています。


↑《Dialgoue- もうひとりのワタシとの対話-》


自分との対話の表現


《Dialgoue- もうひとりのワタシとの対話-》は作品のタイトルにもある通り、自分自身との対話をテーマに描かれた作品です。明るい色ではなく、あえて落ち着いた色合いの中で色の対比を表現することで、自分自身の内側に深く潜りもう一人の自分と対話する姿を描いています。また、あえてもう一人の内側の自分を黒色を使って描くことで誰しもが持っている自分の見たくない部分を表現しています。


2人の自分が描かれている《Dialgoue- もうひとりのワタシとの対話-》をよく見ると「人」の字になっています。しかしこれはKayo Nomuraさん自身が意図して生まれた表現ではありません。自分との対話を表現していく中で自然に生まれた形です。自分との対話を大切に描くKayo Nomuraさんだからこそ生まれた自然な表現なのかもしれませんね。


色の滲みを最大限に活かして


《Dialgoue- もうひとりのワタシとの対話-》は一筆書きに近い形で描かれた作品です。


色のにじみを最大限に活かすKayo Nomuraさん。《Dialgoue- もうひとりのワタシとの対話-》では、まず最初に紙に水を垂らした後で絵の具やインクを水の中に落とすようにして色のにじみを出しています。


↑《Dialgoue- もうひとりのワタシとの対話-》部分


実現するもう一人の自分との対話


《Dialgoue- もうひとりのワタシとの対話-》では黒色が使用されているので一見すると重たい印象を受けるかもしれません。しかし、内側の自分を表現する黒色に対して水色で自分を表現するように色を対比させることで作品の中に抜け感が生まれるように描いています。


絵が描かれているキャンバス自体は小さいものが使用されていますが、キャンバスと額縁との間にあえて余白を持たせることで、作品を見る人がより入り込みやすい構図になっています。是非この作品を通してもう一人の自分との対話をしてみてはいかがでしょうか。




《Nature Talk #1 -歌うように囁いて-》


↑《Nature Talk #1 -歌うように囁いて-》


風や雨の音、動物の鳴き声など一言には表現できない多種多様な自然の姿を描いた《Nature Talk #1 -歌うように囁いて-》。


《Nature Talk #1 -歌うように囁いて-》はKayo Nomuraさんが屋久島を訪れた際に大自然の中で描いた作品です。


屋久島を訪れた際に宿泊していたコテージの窓や玄関の扉など全てを開けて自然が自分の中に流れ込んでくるような空間の中で描かれた《Nature Talk #1 -歌うように囁いて-》ですが、Kayo Nomuraさんは「私たち人間が言葉を使ってコミュニケーションを取るように、自然にも自然の言語が存在して植物や動物たちがお互いに発信し合っている世界が広がっていると思うんです」と自身が考える自然の世界について話しています。


↑屋久島(写真提供:Kayo Nomuraさん)


細かな表現から想像する自分なりの自然


自然豊かな環境の中で描かれた《Nature Talk #1 -歌うように囁いて-》は、Kayo Nomuraさんの中に流れ込んでくるかのような一言では表せない膨大な自然の世界観を形として描かれた作品です。「作品の中に描いたくるくるとした線は風を表現しているのかもしれません」と話しているKayo Nomuraさん。Kayo Nomuraさんの他の作品とは異なり、細かな表現が多いのがこの作品の特徴です。《Nature Talk #1 -歌うように囁いて-》を通して自分なりの自然を考えるのもこの作品の楽しみ方の一つです。


↑《Nature Talk #1 -歌うように囁いて-》部分


多種多様な自然の表現


様々な画材を使用しながら一つの作品を描くKayo Nomuraさん。《Nature Talk #1 -歌うように囁いて-》でも、水彩絵の具やインク、色鉛筆や漫画家の方々が使うGペンのようなものと色々な画材を意図的に組み合わせて描くことで、色々な顔を持つ多種多様な自然の世界を表現しています。


↑Kayo Nomuraさんが普段使用している画材(写真提供:Kayo Nomuraさん)


また、あえてナチュラルな色の額縁を使用することで、自然を表現しています。これも額縁も作品の中の一部と考えるKayo Nomuraさんならではの表現です。


↑《Nature Talk #1 -歌うように囁いて-》部分


アートから生まれる自然との安らぎの時間


Kayo Nomuraさんは「新型コロナウイルス流行語以降は在宅の時間が増えた人も多いかもしれません。私たち人間も自然の一部だと思うので、中々外に出れないこのご時世でもこの作品を通して少しでも自然を感じて頂けたら嬉しいです」と話しています。


この作品をきっかけに近所を散歩したり、少しでも自然と共に過ごす安らぎの時間を作ってみてはいかがでしょうか。




《Fly-いつだって準備はできている-》


↑《Fly-いつだって準備はできている-》


鳥の鳴き声からインスピレーションを受け描いた《Fly-いつだって準備はできている-》。


《Fly-いつだって準備はできている-》は《Nature Talk #1 -歌うように囁いて-》と同様にKayo Nomuraさんが屋久島を訪れた際に描かれた作品です。自然豊かな屋久島に滞在していた際に色々なところから聞こえてきていた鳥の鳴き声からインスピレーションを受けて描かれた作品です。


私たちはいつでも準備できている


メッセージ性の強い作品名が特徴のKayo Nomuraさんの作品ですが、《Fly-いつだって準備はできている-》では「私たちについて考えた時に、色々と準備はするけれど本番はあまりうまく行かないことが多いと思います。でも実は鳥がいつでも翼を広げて飛び立っていけるのと同じように、私たち人間もいつでも準備はできているんだと思うんです」といったKayo Nomuraさんの想いが込められています。


表現する温かな想い


「いつでも飛び立てる鳥のように私たち人間も実は準備ができている。しかし、中々飛び立てない」


そんな人の背中をそっと押し出してあげるかのような《Fly-いつだって準備はできている-》。あえてはっきりとした鳥を描かないことでこの作品に込められた「大丈夫なんだよ!」といったKayo Nomuraさんの想いが表現されています。


↑《Fly-いつだって準備はできている-》部分


《Fly-いつだって準備はできている-》には「自らのハードルを勝手に上げてしまう人が多い。そんな人たちの背中を少しでも軽くして後押ししてあげたい」と話すKayo Nomuraさんの温かな気持ちが表現されています。


あえて額縁を使用しないことで、枠にとらわれずに準備しすぎないことの大切さを表現しています。


シンプルの中の細かな表現


《Fly-いつだって準備はできている-》はスポイトを使用して描かれています。黒色をベースに描かれていますが、よく見るとゴールドや水色も使用されてるのがわかります。一見するとシンプルな作品ですが、シンプルさの中にも色のにじみやスポイトを利用して描いているからこそ生まれる線のかすれや微妙な太さの違いなどがあります。


↑《Fly-いつだって準備はできている-》部分


想像して楽しむアート


Kayo Nomuraさんは「シンプルな作品だからこそ、絵を眺めながら自分の想像力を掻き立てて自分の中のアートの世界を楽しんでほしい」と話しています。


「作品の中に描かれている鳥は何色の鳥なんだろう」「この鳥はどこかへ羽ばたいていこうとしているのかな」など自分ならではの世界観で《Fly-いつだって準備はできている-》を飾って楽しんでみてはいかがでしょうか。




《One Step at Time -積み重ねた歩みは裏切らない-》


↑《One Step at Time -積み重ねた歩みは裏切らない-》


世界中を旅しながら絵を描く「制作の旅」の中で生まれた作品の一つ《One Step at Time -積み重ねた歩みは裏切らない-》。


新型コロナウイルス流行以前まで毎年行っていた「制作の旅」。《One Step at Time -積み重ねた歩みは裏切らない-》はKayo Nomuraさんがイタリアを訪れた際に、目に飛び込んでくるようなビビットで鮮やかなイタリアの街の色合いに惹かれ、「一歩一歩進んでいけば良いんだよ」といったKayo Nomuraさんの想いが込められた作品です。


「描き終わった後に気づきましたが、どこか信号機のような絵になっているんですよね。赤色の次は青色、青色の次は黄色のように一歩一歩着実に進んでいけばいいといった私の想いと信号機の色合いが自然とリンクしたんだと思います」とKayo Nomuraさんは話しています。


努力は必ず自信に繋がる


普段から海や湖、庭園などに外出し野外制作をすることを大切にしているKayo Nomuraさん。


《One Step at Time -積み重ねた歩みは裏切らない-》には「努力は報われるか報われないかわからないけれど、自分自身が時間と労力を使って積み重ねてきたものは結果を問わず、必ず自分自身の中に蓄えられていくものなので無意識のうちに自分の自信に繋がると思います」と話すKayo Nomuraさんの想いが込められています。


色で表現するイタリアの街


Kayo Nomuraさんはイタリアを訪れた際に、激しくも鮮やかな街の色合いに感化されたそうです。原色に近い色のインクと水彩絵の具を紙の上で混ぜ合わせながら描くことで、ビビットで鮮やかな色合いのイタリアの街を表現しています。


《One Step at Time -積み重ねた歩みは裏切らない-》では、現地で購入したインクが使用されています。Kayo Nomuraさんが行っている「制作の旅」では現地の画材を使用するのがKayo Nomuraさん自身のマイルールだそうです。


↑イタリアの街並み(写真提供:Kayo Nomuraさん)


表現する作品の中の奥行き


《One Step at Time -積み重ねた歩みは裏切らない-》では作品の中に奥行きを持たせるために、絵の周りにマットな白色の背景を組み込み、ナチュラルな色の額縁を使用しています。


↑《One Step at Time -積み重ねた歩みは裏切らない-》部分


応援する新たな一歩


メッセージ性の強い作品を数多く描くKayo Nomuraさんはこの作品について「この作品は何か新しい挑戦をしたいと考えている人や中々自分自身に自信を持てない人に飾ってもらえると嬉しいです」と話しています。是非この作品をきっかけに新たな一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。




最後に


今回は対話をテーマに描くKayo Nomuraさんの作品についていくつか紹介しましたが、いかがでしたでしょうか?


幼少期から現在に至るまで、絵画を含む様々な地域での暮らしを経験してきたKayo Nomuraさんが描くアートは「自然」や「対話」をテーマに描かれています。


Kayo Nomuraさんの作品は、作品を見た人がその作品の意味合いを理解できるような作品名として英語と日本語を組み合わせた作品名になっています。そんな詩のような作品名はどこか作品に入り込む入り口にもなっています。メッセージ性のある作品名と共にKayo Nomuraさんの作品を楽しんでみてはいかがでしょうか?